熱い声が室内に響いていた。
社内会議のプレゼンテーション。需要が伸びてきた新商品をいかに効率よく生産するか、改善リーダーを任された祐斗さんは、熟慮を重ねて考案した新たな刃物と加工方法について説明していた。耳を傾ける社員の中に、昇さんがいた。機械課のマネジメント職にある父は、そんな息子の姿に、逞しさを感じていた。
立和田昇と立和田祐斗
父と子は、同じ製造部の機械課で働く。
口数は少ないが温厚で慕われる父・昇と、持ち前の明るさで職場をなごませる息子の祐斗。性格や立場こそ違えども、共に不可欠な力として九州タブチを支える。
日々のモノづくりに取り組む中で、その厳しさと喜び、そして醍醐味を、父は伝え、息子は受け継ぐ。
熱い声が室内に響いていた。
社内会議のプレゼンテーション。需要が伸びてきた新商品をいかに効率よく生産するか、改善リーダーを任された祐斗さんは、熟慮を重ねて考案した新たな刃物と加工方法について説明していた。耳を傾ける社員の中に、昇さんがいた。機械課のマネジメント職にある父は、そんな息子の姿に、逞しさを感じていた。
昇こんなことまでできるようになったのかと、成長に驚くことがあります。機械加工の仕事が好きでたまらないのが、そばで見ていて分かります。
入社当初、祐斗さんは機械加工の技術の壁にぶち当たった。思うような仕事ができず、悩むこともあった。そんなとき、同じ現場の先輩たちが支えてくれた。
祐斗失敗すればいい。大切なのは、失敗を恐れずに、自ら機械を動かすことだと、先輩たちが励ましてくれました。たくさん失敗しましたが、その失敗の分だけ、いつしか自信が生まれていました。
「なかなか良いじゃないか。」
静かにプレゼンを聞いていた、口下手な昇さんが、つぶやくように言った。祐斗さんには、心なしか、父の目元が緩んで見えた。
祐斗さんは、幼いころから、父の職場を知っていた。家族参観などの社内イベントで会社を訪ね、父が扱う大きな機械に憧れを抱いたりした。高校3年次にはインターンシップで九州タブチの職場体験をした。そのとき、ある確信をもったと言う。
祐斗ここで働くのは、ぜったい楽しいと思いました。仕事をさせられているのでなく、冗談を交わしたりしながらも、自ら進んで働いている姿がイキイキしていました。
その後、大学で学んだ祐斗さんは、就活シーズンを迎えた。志望企業の1つに、九州タブチがあった。だが、本命とするには、少し迷いもあった。父への照れや遠慮があった。そんな祐斗さんの本心を、母が後押ししてくれた。「お父さんと一緒の仕事をしてみなさい」と。
昇妻は、祐斗に九州タブチに入社して欲しかったようです。社内行事などで、会社の雰囲気をよく知っていましたから。私も内心入社を願っていたので、妻が気持ちを代弁してくれたところもあります。
それから約6年祐斗さんは、昇さんと同じ機械課で働いている。父の背中を少しずつ意識し始めた。